2008年2月26日火曜日

「ブランディングをご存知ですか?」 USFL連載その第20回(7月3週号)

第20回目はUSフロントライン(2007)7月3週号USFLに入っています。
コラム は、このブログ内でお読み頂けます。


やさしく解説 ウェブマーケティング
レイア・ワークマン(ACE Inc.)

SEMとはSearch Engineの略で、検索エンジンを使って様々な手法により集客するマーケティングの総称です。SEMの代表例には、本稿でも取り上げてきたSEO(検索結果の上位に表示されるようなウェブサイトを作り、集客する手法)や、PPC(検索キーワードに連動するテキスト広告を有料で表示してもらい、集客する手法)などがあります。

SEMは、やっていて当然
北米における今年のSEMの統計を見てみましょう。昨年、北米の広告主は、SEMになんと94億ドル(*)を費やしました。2005に比べると62%の増加です。2011年までには186億ドル(*)が費やされると予測されています(*これより多いという予測すらあります。SEMは大産業であり、一般の企業の広告費として年々急増していることが分かります)。
アメリカで本気でビジネスをしたい人であれば、誰もがSEMを当たり前に行っており、SEMなしでは考えられないところまで来ているのです。今からSEMを始めるとすれば、完全に後発組です。
その昔、ホームページを持つことがステータスになっていた時代もありましたが、今や企業においてホームページを持つだけではステータスでも何でもありません。これと全く同じく、SEOやPPC「 も、実は数年前から「やっていて当たり前」の時代になっています。

SEMに関する面白い事実
SEM利用者増加の要因の一つは、オンラインビジネス(ネットユーザーが顧客ベースのビジネス)の増加です。これは読者の皆さんも、感覚的に理解しやすいと思います。
ただSEMは、アメリカのマーケットにおいては、オンラインでの直接販売より、むしろブランディングに活用される傾向がありました。2006年になってようやく、売り上げに直接つなげる広告ツールとしてのSEM利用が上回ったのです。これって少し意外ではないですか?
「そもそもブランディングとは何?」と思われていた方、もしもブランディングについてご存知ないのであれば、ビジネス的にはかなり痛いです(次回は、この点をもう少し詳しく触れます)。


ブランディングとは何か?
御社の商品・社名は、消費者にどれぐらい知られていますか?それを確認する一つの指標が、検索エンジンでの検索数です。「ほとんど検索されていない」企業の方にこそ、「ブランディング」の必要性をお教えしたいです。
「マイクロソフト」という社名を知らない方はいないでしょう。Windowsソフトウェア名もないと思います。まさにブランド認知度が高いといえます。しかし「Zune」はどでしょうか?
知らない方も結構いると思います。これはマイクロソフト社がアップル社の「iPod」に対抗して出したメディア・プレイヤーです。

今年の1月、(2007年当時)ある検索エンジンにて「Zune」というキーワードが18万6624回、同じ時期に「iPod」検索された回数は103万1801回。約5倍以上でした。
一般の人にとってメディア・プレイヤーといえば「Zune」ではなく「iPod」なのです。これがブランディングの力です。

2008年2月10日日曜日

「ウェブ予算の考え方、間違ってませんか?」USFL連載その19(7月1週号)

19回目はUSフロントライン回7月1週号USFLに入っています。
コラム19回目 は、このブログ内でお読み頂けます。


やさしく解説 ウェブマーケティング
レイア・ワークマン(ACE Inc.)

映画「フィールド・オブ・ドリームス」を覚えていますか? 
89年に大ヒットした作品です。ケビン・コスナー演じる農夫がある日「If you build it, he will come.」(それを作れば、彼はやってく来る)という、天から謎の囁(ささや)きを耳にします。「それ」とは何か? 「彼」とは誰か? はっきりとは分からないまま、彼はその囁きを信じ、家族や他人をも巻き込んで、農場を失いそうになるのもかまわず、トウモロコシ畑の中に野球場を作ります。そしてその野球場に奇跡的に人が集まってくるという、感動と涙で終わるハッピーな映画でした。

フィールド・オブ・ドリームス的思考とは
しかし現実の世界では、ただお店を出しただけでは、お客さんはなかなか来ません。普通は集客のために宣伝広告を行います。人通りの多い一等地に出店した場合は、宣伝広告は不要かもしれませんが、その分、場所代が高くなります。

ウェブの世界でも全く同じです。ウェブをただ作っただけで、誰かがそこへやって来るわけではありません。
仕事依頼の問い合わせは、本来なら私たちにとって喜ばしいことなのですが、ある種の問い合わせが入ると、「また安易なビジネスプランで、あり得ないことを期待しているな」と思い、憂鬱になります。文句を言っているのではありませんが(OK、ちょっとした文句ですね。笑)、この種の問い合わせは、個人ビジネスの方だけではなく、わりと大手の企業の方からも結構な頻度で入ってくるのです。以下、例を挙げます。

「問い合わせが今ひとつなので、とりあえずデザインをリニューアルしたい」
(問い合わせが少ない根本の原因は、そもそもビジターが少ないからでは?)

「商材はとても優れているので、ただホームページを作ってくれさえすれば成功する」
(商材もホームページも、まず人に知られなければ意味はないのでは?)

「英語ページを追加すれば、少しは英語圏の顧客も獲得できるはずだ」
(何百万もある競合ページと勝負できるだけの予算を考えているのだろうか?)

こうした問い合わせに共通しているのは、集客というプロセスの軽視です。ホームページさえ作れば、人が勝手にやってくると勘違いしている「フィールド・オブ・ドリームス的思考」です。

集客なくしてビジネスなし
集客を考えずにまずホームページを作るのは、完全に順番が逆です。以前に本欄で紹介したSEO(検索結果の上位に表示されるようなウェブサイトを作り、集客する手法)は、サイト制作段階から考慮する必要があるからです。集客力のあるホームページにするには、一から作り直さないといけなくなります。
残された集客法としては、PPC(検索キーワードに連動するテキスト広告を表示してもらい、集客する手法)が有力ですが、広告がクリックされる毎に課金されます。
しかし、こうした広告費を想定していない人が多いのです。

集客のための広告予算は?
どんな手法であれ、集客するにはコストが掛かります。競合サイトが多数存在する場合、もしくは、検索結果において一等地を手に入れたい場合、相応の広告費が必要です。それを予め確保していなければ、どんなビジネスプランもただの妄想です。
ウェブ制作予算において、サイト構築費と広告費の比率が明らかに間違っているケースが目に付きます。業者さんにウェブ制作を依頼する前に、どういう手法でどの程度の集客が見込めるのかをよく確認しておきましょう。そして集客状況は容易に計測できるので、実際に検証を行うとよいでしょう。
集客を甘く見ると、あなたの「フィールド・オブ・ドリームス」はハッピーでも感動的でもなく、涙だけで終わります。
では次回20回(No.365)で、お会いしましょう。If you read it, I will come.