2008年9月26日金曜日

「ウェブマーケティングの1-2-3」USFL連載その第28回(11月3週号)

今年もあとわずか。昨年の10月から27回にわたってウェブマーケティングについて書いてきました。
少しはお役に立てたでしょうか?
読者の皆さんにウェブの存在価値を見直してもらえ、皆さんのオンライン世界に関する知識増加に役立ったのなら幸いです。今回は、皆さんと同じ一人のウェブユーザーとしてウェブマーケティングの重点をまとめてみました。私の旅自慢も入っているのですが、どうか大目に見てください(汗)

一に露出
皆さんはどうやって旅行の計画を立てていますか?
行ったことのない国のホテルを決める時、私はガイドブックと検索エンジンを使います。ホテルのオーナーが賢ければ、紙媒体の広告だけではなく、検索エンジンでも上位に来るようにして露出機会を増やそうとしていることが分かります(検索エンジンで上位に来ているのはSEOやPPCなどを行ったからです。SEOやPPCって何?という方は、ぜひ第一回からご覧ください。本誌のサイトwww.usfl.com/ee/でバックナンバーをダウンロードできます)。
もしホテル名が分かっていれば、そのウェブサイトを探してみます。ウェブサイトがない場合、選択肢からは外します。「今の時代、サイトはあって当たり前、なければ対象外」と考えているわけです。でもこれは、私だけに限らないのではないでしょうか?

二にコンテンツ
ガイドブックからURLを直接入力したにせよ、検索エンジンから飛んだにせよ、わざわざそのサイトを見ようとするのは、もっと深い情報を求めているからです。
ホテルに限らず、求めている情報・画像が分かりやすく合理的に配置されていないと「何のためのサイトだ?」と怒りすら覚える私です。サイトはあるけれど情報が古いか足りない、写真はあるけれど魅力的でない場合も、私は選択肢から外します。ガイドブックの一枚の写真に惹かれてサイトに行ったものの、そこでがっかりするケースが少なくありません。

三に競争力
一般的なユーザーは、ブラウザーに様々なサイトを並列させて比較します。ここで他社サイトに負けてしまえば、ビジネスチャンスを逃すことになります。ですから、単に” 良い“サイトにするだけでなく、他社サイトと比較した上で、なぜこの宿(会社)、このサービス(商品)を選ぶべきなのか、しっかりとした説得力を持たせないといけません。

四に評判
ここまで生き残っているサイトは、露出は十分であり、好意的な印象を残すのにも成功し、情報も充実していて写真も魅力的、他社サイトと比較しても見劣りしないものになっています。
ここからは評判が重要です。私は、一般宿泊者が自分の写真や感想を投稿できるサイトに行き、どのホテルの評判が高いか探りました。ノミに襲われて噛み跡で真っ赤になった腕の写真とか、風呂場の不潔な写真など、とても参考になります。世界中の人々が感想を共有できるオンライン世界はありがたい限りです。

五に応対・信頼性
無限に感じられた選択肢の中から、既にわずかのサイトに絞られています。ここからは、人間の出番です。私の場合、選んだホテルにメールで連絡します。応対が早くプロフェッショナルかつ親切であるかどうか探るのです。ここでの応対がまずいのは、何とももったいない話です。なぜなら私は、オンラインでビジネスを成功させる苦労をよく知っており、どれぐらい激しい競い合いを経て、そのサイトがここまで生き残ってきたかを理解しているからです。ちなみに、こうやって選んだ今回のホテルやレストランは大正解
で、未知の外国でしたが大満足の旅行ができました。今後ももちろん、ウェブを参考に旅行計画を立てることでしょう。

2008年9月2日火曜日

「SNSマーケティングにおける心得」USFL連載その第27回(11月1週号)

前々回触れたロン・ポール氏のようなオンライン上だけの人気者でもなく、前回触れたミット・ロムニー氏のような、オンラインに疎いまま利用しようとしている候補者でもなく、ソーシャル・ネットワーキング・サイト(SNS)を有効に活用している大統領候補がいます。それが民主党のバラク・オバマ氏です。
マイスペース、フェイスブック、ユーチューブなど既存のSNSを活用しているのみならず、オバマ氏は自分のサイト内にmy .barackobama.comという自前のSNSを持ち、7万人のメンバーを抱えていると言われています。ちなみに同じく民主党の候補者で、前回の大統領選では副大統領候補となったジョン・エドワーズ氏も同じような仕組みのサイトを持っています。
このオバマ氏とエドワーズ氏が、オンライン上の政治資金集めの上位に来ているのは偶然ではないのです。オバマ氏は、人気調査ではトップのヒラリー・クリントン氏に負けていましたが、オンラインにおける政治資金集めという点においては優勢でした。もしかすると、オンラインで集めた資金額の最高記録を更新してしまうのかもしれません。
特筆すべきは、オバマ氏に政治資金を寄付している層の中には、SNSがあって初めて政治家に寄付することになった人々が存在していることです。オバマ氏の陣営は、SNSマーケティングの第一ステップをクリアをしています。
オンラインメンバーが、自ら周辺の人々に伝達し、他人の興味を喚起し(口コミ効果)、そのコミュニィーを拡大していっているのです。

政治家も企業も同じこと
SNSマーケティングが、今とてもホットなマーケティング用語・概念であることは間違いないでしょう。しかし、実際に成果を上げるためには、従来のトップダウン型マーケティングから離れ、ターゲットに伝達するためのツールを直接用意したり、伝達したい内容までを提供したりする必要があります。
そのためには、コミュニティーをよく理解し、しっかり受け入れられるようにその一員となり、溶け込むことが重要です。SNSの仕組みは、一見、簡単に思えます。しかし、他のウェブマーケティングの手法と同様、「皆がやっているから」という甘い考えで便乗するだけで成功するような甘いものではありません。
企業であろうが、オンライン活用で伸び悩んでいる共和党候補者であろうが、非伝統的なマーケティング手法に着手する場合、伝統的な考え方を持ち込んでは成功は難しいのです。

甘い考えは捨てよう
甘い考えは捨てよう企業や政治家の中には、SNSマーケティングとは、マイスペースやフェイスブックなどにプロファイル(自己紹介ページ)を作り、「友人」をより多く作ることだという勘違いが多いように思います。
これは、ウェブマーケティング全般でいまだによく見られる勘違いです。「何を」までしか見ていないのです。「何のために」というところを見極めないといけません。
そのプロファイルや「友人」を、投票なりお金なり、目的としているものへ如何に変えるかを考えることが重要です。
本欄で紹介してきたSEOやPPCなどを使って、検索エンジンの表示結果のできるだけ上位に表示させ集客に成功したとしても、それを売り上げや問い合わせにつなげられるページコンテンツがなければ意味がないのと同じですね。

2008年7月29日火曜日

「SNSマーケティングの失敗例?」USFL連載その第26回(10月3週号)

ユーチューブに触れずには、ソーシャル・ネットワーキング・サイト(SNS)やSNSマーケティングを語れないでしょう。ユーチューブでは、誰でも自作ビデオをアップして他者に閲覧してもらえ、さまざまなビデオを無料で見ることができます。とても楽しい人気サイトです。
グーグルに16億ドルで買収されるまで、全く利益を出していなかった(回線費用が莫大で完全に赤字だったため、収益モデルが全く見えてこなかった)、まさに現代的な存在です。
しかし、一カ月に4千万人以上のビジターを誇るサイトはなかなかありません。ここに企業や選挙候補者は目を付け、とても面白いことを試みました。7月、8人の民主党大統領候補者がCNNとユーチューブ共催の討論会に臨み、ユーチューブユーザーからの質問に答えたのです。その討論の模様は現在でもオンラインで視聴可能です。
ローカルの政治討論会に変えてしまった、市民参加型の画期的な試みだったといえるでしょう。
ちなみに、共和党候補者によるユーチューブ討論会は11月に予定されていますが、既に少なくともオンラインの世界において、自分で自分の首を絞めた候補者がいます。

オンラインを語る前にまず理解を
私は「オンラインを理解せずに語るべからず賞」を、共和党の大統領候補者ミット・ロムニー氏にあげたいです(微笑)。政治家の選挙運動においても、企業と同じくマーケティング部署があり、流行のマーケティング手法などには敏感です。しかしあいにく、これまた企業と同じく、「皆がやっているから私もやらなくては!」という思考に走りがち。不十分な理解のまま動いて、失敗する例もあります。敏感になってはいても十分に理解していなければ、オンラインの世界では、狙っている層に逆効果を及ぼす可能性があるのです。ロムニー氏は自分の支持層を意識し「アダルト系の画像を子供の手に入りにくくしたい」という公約を掲げています。そして、「インターネット上で子供をより安全にしたい」として、ある演説にてユーチューブを痛烈に批判したのです。「ユーチューブは見知らぬ人と友達になれるサイトであるが、ユーザー層を調べたところ、2万9000人の性犯罪者がいた」と語ったのです(要するに、危険に満ちたウェブサイトであると言い放ったのです)。
しかし、メンバー層に2万9000人の性犯罪者がいることが発覚したのは、実はユーチューブではなくマイスペースだったのです。これだけでもかなり痛い誤解ですが、批判すべきであったマイスペースにロムニー氏は自己紹介ページを持っていました(溜息)。
ロムニー氏がCNNとユーチューブ共催の討論会に参加をするかどうかは未定のようですが、「ユー
チューブ討論会には威厳が足りない」という主旨の発言もあったとか……。オンラインユーザーの反感をどこまで背負い込むつもりなのでしょう。
最近、共和党候補者の何人かは「オンラインを利用してはいるものの、ユーザーとの対話を避けてしまうため全くプラスに変えられない」と批判されています。全体的に共和党候補者が、ウェブ上の募金集めでは民主党候補者に負けている原因とも言われています

2008年6月26日木曜日

「SNSとマーケティングと政治家」USFL連載その第25回(10月1週号)

ソーシャル・ネットワーキング・サイト(SNS)やウェブを利用したマーケティングにおける成功・失敗例に、どれもかなり面白いものがあります。今回は、政治家とオンラインにおける彼らのマーケティングについて触れます。

04年はディーン氏が善戦
前回(04年)の大統領選挙において、ある民主党の候補者が、その後の政界のキャンペーン活動を変えたと言われています。ハワード・ディーンという、出馬当時はほとんど知られていなかった民主党の大統領候補です。彼は、政界においてはほぼ初めての試みとして、インターネットとSNSを利用し、募金集めから知名度向上に至るまで大成功を収めました。ご存知の通り、民主党の予備選(大統領選に出馬する候補を選ぶ党内選挙)には勝てませんでしたが、彼のオンライン活動は歴史にその名を残したと言っても過言ではないでしょう。

最終的にオンラインで集めた支持や知名度を票に変えることは難しかったようですが、知名度も政治資金も乏しかった無名の政治家が、全国区の大物政治家との予備選で善戦したのは事実です。これは、無名の企業がウェブマーケティングをうまく活用し、大手企業にオンライン上で善戦しているケースに似ていますね。

大統領選挙の候補者たちは、幾つかの厳しい課題に直面しています。その一つに、宣伝活動をするための資金力の極端な差が挙げられます。投票率の低い若者層の興味をいかに引きつけるかも切実な問題です。でも、企業と同様、ウェブマーケティングを有効に活用すれば、こうした問題をある程度はクリアできることでしょう。

ちなみに04年における若者の投票者数は、前回00年の時よりも500万人近く多かったそうです。その理由には、イラク戦争など政治への関心が高まっていたことも挙げられますが、インターネットにより手軽に情報収集やコミュニュティー内の対話が可能になり、若者の政治参加が容易になってきた点も見逃せません。

08”年のディーン氏“は?
08年のディーン氏になるのは、もしかしたらロン・ポールという共和党の候補かもしれません。皆さんは、彼の名を聞いたことがありますか?既存の大手マスコミを視聴している方にとっては、馴染みのない候補かもしれません。しかしポール氏こそ、今回の”オンライン候補者“の筆頭でしょう。

今年の7月、「Ron Paul」というキーワードは「George Bush」よりも多く検索されていたのです。インターネットをうまく使うポール氏は、ユーチューブやブログなどで政策や公約を伝え、かつてのディーン氏のようにSNSのwww.meetup.com(興味・関心が同じ人々をつなぐSNS)を利用して、支持者が簡単に集会を開いて募金活動などができるようにしています。

ちなみに彼はフェイスブックにおいては、より知名度のあるジョン・マケイン候補より多くの支持者を持ち、マイスペースにおいては、有力候補のミット・ロムニー氏よりも多くの「友人」を持ち、ユーチューブにおいては、民主党のヒラリー・クリントン候補よりもビデオの閲覧回数が多いのです。

しかしロン・ポール候補が予備選に勝つことはあり得ないと言われています。それなのに、なぜオンラインではそこまで支持を得られるのでしょうか。一つ言えるのは、オンライン・コミュニティーとオフラインの世界とには、いくつかの明確な違いがあるということです。

2008年6月3日火曜日

「SNSとマーケティング」USFL連載その第24回(9月3週号)

ウェブマーケティングの様々な面を紹介してきた本欄ですが、主に取り上げてきたのはSEM(検索エンジンマーケティング)でした。今回から4回にわたって、ウェブ上の別のマーケティング媒体というか手法であるSNSについて触れます。

ソーシャル・ネットワーキング
以前、ウェブ上のコミュニケーション方法が、従来の一方通行型からインタラクティブ型(ユーザーがウェブ上で他者とのコミュニティーを形成する)にシフトしている傾向について触れました。
ウェブ統計を取るヒットワイズ社によると、今年の2月の時点において、ウェブユーザーの6・2%がソーシャル・ネットワーキング・サイト(SNS)へアクセスしています(日本では「SNS」の最後の「S」はサービスの略だとされていますが、本欄ではウェブサイトを意味すると考えます)。
SNSといえば日本の場合、ミクシィ(Mixi)などが有名です。アメリカの代表的なSNSは、マイスペース(MySpace)とフェイスブック(Facebook)になります。

ひと口にSNSと言うけれど
現在2億人のメンバーを持つと言われるマイスペースは、何年か前にフォックス・ブロードキャスティングの親会社に約6億ドル弱で買収された巨大SNSです。そして、マイスペースに次ぐフェイスブックは3100万人強、日本最大のミクシィは約1100万人のメンバーを持つと言われています。
初期の頃から多くのユーザーを確保していく方針だったマイスペースでは、誰でもアカウントを作ることができ、見事に莫大なユーザーの獲得につながりました。
一方フェイスブックは、元々ハーバード大学の学生間で始まったものです。その後近辺の大学生に拡張され、さらに「.edu」のメールアドレスをもつ学生(正式の大学生)、さらには高校生をも追加していきました。現時点では、誰でもメンバーになれることになっています。
この背景の違いが、最近になってSNSの階級社会を生み出していると言われています。ざっくり言ってしまうと、高等教育を受けた層はフェイスブック、庶民派はマイスペースです。
SNSが登場した初期の頃から、巨大SNSの持つメンバー数やユーザー層に魅力を感じ、様々な音楽バンドから各種ショップまで、SNS上でプロファイル(自己紹介的なホームページ)を作り、低価格で口コミ効果を狙う人々がいました。特に若者層にアピールしたい場合、伝統的なメディアよりウェブという新メディアと向き合う必要性が出てきました。もちろんその中には、効果的なキャンペーンもあれば、伸び悩む、あるいはかえって反感を買ってしまうキャンペーンもあります。
本当のところは、SNSごとに「味」というか「傾向」があるので、それらを十分に理解していないままマーケティングを行うと痛い目に遭います(6月3週号で紹介したように、バイラル・マーケティングに失敗してユーザーの反感を買うのと同じです)。

100万人以上の友達
SNSには通常、「友達」機能があります。プロファイルを見て「友達になりたい」とリクエストを送り、承諾されれば、めでたく友達です。中には100万人以上の「友達」を持つ子もいます。
03年からマイスペースのメンバーであるクリスティーンさん(ユーザー名forbidden)は、「友達」の数の多さを利用し、無名の一般人からインターネット・スターへと変身しました。今ではマネージャーを持ち、スポンサーもついて、テレビや雑誌にも出演しています。
マイスペースの使用ルールにより、本当は商業目的に使ってはいけないとはいえ、知名度を上げれば、
知名度自体をお金に変えることができるという彼女の考え方は、まさに今の時代を表していますね。
次回10月1週号(No.374)以降では、SNSをうまくマーケティングに活用できている例と、逆に甘く見て痛い失敗をしているケースを具体的に取り上げます。

2008年5月13日火曜日

「アメリカ進出とブランディング」USFL連載その第23回(9月1週号)

日本に住んでいた頃、テレビのニュース番組などを見て不思議に思ったことがありました。「海外から見た日本」という話題が頻繁に取り上げられていたのです。アメリカでは、「海外から見たアメリカ」という報道など、恥ずかしいくらい少ないため、余計に不思議に感じたのかもしれません。

「侍」「芸者」と「日本製」
「海外から見た日本」に強い関心を持っている日本の人々は、きっとアメリカにおける日本のイメージにも詳しいのだろうと私は思っていました。
しかし今は考えを改めています。

どうもアメリカの消費者を甘く見ている気がするのです。「侍」「忍者」「芸者」という伝統的な日本のイメージを、アメリカ人の日本観だと思い込んでしまうケースがあります。そしてその伝統的なイメージに乗っかったまま、単純なアピールで攻めるマーケティング戦略が結構見られます。必ずしも不正解とは言えませんが、和食店でもない限り、おそらく不十分です。

次によく見られるアメリカ進出の失敗例は「日本製」であることを過信してしまうケースです。

前回、トヨタが行った「レクサス」のブランディングに触れました。レクサスは素晴らしい性能をもつ日本車ですが、決して「日本製」であることに頼り過ぎませんでした。レクサス自体としての巧妙なブランディングが今日の成功に結びついたと言っても過言ではないでしょう。もちろん、素晴らしい性能が大前提ですが、「日本製だから売れるはず」という単純な発想では決してなかった。その逆に、アメリカ人が日本車について持つ、ある種の固定観念を払拭するようなマーケティングを行っていたのです。

市場開拓:お尻が文化を変える?
アメリカの消費文化に元々ないものだからといって、アメリカで売れないわけではありません。その代表例には、お豆腐、緑茶、そして最近では枝豆といった、アメリカの食文化に参入した日本の食材が挙げられます。

最近の市場開拓は、ウェブマーケティングなど比較的に安価な手法の出現により、以前よりは簡単になってきています。先日、インターネット上である記事を読んでいた時、そのサイトにあったバナー広告がとても気になりました。

スマイル・マークの書かれた裸のお尻たちが私を誘っているのです。
といっても、普通のまじめなニュースサイトですよ(汗)。

そのバナーは、日本の便座メーカーTOTO社のものでした。アメリカではまだ馴染みの薄いビデ・トイレットシートを宣伝していたのです。

このバナー、5月1週号(No.355)で取り上げたバナーブラインドネス(消費者が無意識に広告を無視できるようになること)を、見事にクリアしたわけです。

何しろお尻をそのまま堂々と出しているのですから、さすがにインパクトがありました。ウェブという媒体だからできた部分もあります(タイムズ・スクエアの屋外広告にも出そうとしたところ、教会から抗議を受け、取り止めになったようです)。大手企業にしてはリスクのある大胆なアプローチですが、クリーンなイメージもきっちり残せていると思いました。

型にとらわれず、ウェブもうまく活用して、元々ない市場までも創造しようとするTOTO。学ぶべきところがたくさんあると思いませんか?

...

2008年4月10日木曜日

「ブランディングその3」USFL連載その第22回(8月3週号)

これまで2回にわたって「ブランディング」について触れてきました。今回はそのまとめです。でも、「ブランディング」の定義をまだ説明していませんでした。「ブランド」とは、商品やサービスを象徴するものであり、名称や外見(ロゴ、パッケージ、色など)のみならず、その商品や企業に対する消費者の精神的なあり方までも含んでいます。企業は、消費者が自社ブランドに対するロィヤリティー(忠誠心)を持つようマーケティングします。そして、競合する商品の中から自社商品が選ばれるようにするのです。消費者に自社ブランドを浸透させる行為を「ブランディング」と呼びます。

ちょっと思い出話
私の祖父母の世代は「メイド・イン・ジャパン」に対して好意的ではありませんでした。「日本製は安物」というイメージがあったのです。私が初めて日本製品に触れたのは、家族が真っ青な” ダツン“(DATSUN/日産自動車が用いた商標名)の小型トラックを買った時でした。買ってすぐ、母がドアを開こうとするとドアが外れてしまいました(笑)。

2台目の日本車はホンダのシビック。外見は特に魅力的ではなかったのですが、新車の取り柄について両親が「安くて、燃費が良く、長持ちする」と話していたのを思い出します。実際あの車は長く持ちました。その後はターセルなど、色気はなくても、経済的で安定性のある交通手段としてトヨタ車を買うようになりました。
以来、私の家族はスウェーデン製の例外一台を除き、日本車を買っています。
このようにしてトヨタ車は、私と、おそらく私と同世代のアメリカ人の頭の中に浸透していったと思います。安定性・信頼性があって経済的。色気はほとんどないけど良い車。そういうブランドイメージです。

ブランドの持つ意味
ご存知のとおりトヨタは今、アメリカの高級車マーケットに挑戦し、見事に成功しています。しかし、あえて「トヨタ」ブランドではなく、「レクサス」ブランドとしてアメリカ市場に登場させました。
いったい何故でしょう?
日本人の方からしてみると、日本車にも高級車があることは不思議では
ないと思いますが、アメリカ人の感覚では違ったのです。20年前のアメリカでは、「日本車」は安定性・経
済性に優れてはいても、決して高級なイメージはありませんでした。
そこでトヨタはマーケティング戦略として、「トヨタ」という冠をはずし、全く別物であるかのような「レクサス」という新しいブランドを作り上げていったのです。

ブランディングの極意は一に露出、二にイメージ
これまでの2回、ブランド認知度アップの手法を紹介してきました。サービスや商品を人目に触れさせる手段として、テレビCM、ラジオ、新聞・雑誌広告、インターネットの検索エンジン(PPC やSEO)など広告媒体を利用できます。このステップは必要不可欠であり、非常に重要であることは誰にでも分かります。
そして、消費者がそのブランドに対してどういうイメージを持つか?
結局のところこれが、最終的に消費者がその商品を買うか買わないかを決める要因になります。
先のレクサスの例のように、ターゲットとするマーケットに受け入れられる戦略的なブランドイメージを創造する必要があるのです。
一に露出、二にイメージ。この2つのステップをクリアした時こそ、ブランディングは真の威力を発揮します。逆に言うと、この国では、ブランディングされていないものはまず売れません。この事実をきちんと理解して、ウェブを活用したマーケティングを行いましょう!