2008年7月29日火曜日

「SNSマーケティングの失敗例?」USFL連載その第26回(10月3週号)

ユーチューブに触れずには、ソーシャル・ネットワーキング・サイト(SNS)やSNSマーケティングを語れないでしょう。ユーチューブでは、誰でも自作ビデオをアップして他者に閲覧してもらえ、さまざまなビデオを無料で見ることができます。とても楽しい人気サイトです。
グーグルに16億ドルで買収されるまで、全く利益を出していなかった(回線費用が莫大で完全に赤字だったため、収益モデルが全く見えてこなかった)、まさに現代的な存在です。
しかし、一カ月に4千万人以上のビジターを誇るサイトはなかなかありません。ここに企業や選挙候補者は目を付け、とても面白いことを試みました。7月、8人の民主党大統領候補者がCNNとユーチューブ共催の討論会に臨み、ユーチューブユーザーからの質問に答えたのです。その討論の模様は現在でもオンラインで視聴可能です。
ローカルの政治討論会に変えてしまった、市民参加型の画期的な試みだったといえるでしょう。
ちなみに、共和党候補者によるユーチューブ討論会は11月に予定されていますが、既に少なくともオンラインの世界において、自分で自分の首を絞めた候補者がいます。

オンラインを語る前にまず理解を
私は「オンラインを理解せずに語るべからず賞」を、共和党の大統領候補者ミット・ロムニー氏にあげたいです(微笑)。政治家の選挙運動においても、企業と同じくマーケティング部署があり、流行のマーケティング手法などには敏感です。しかしあいにく、これまた企業と同じく、「皆がやっているから私もやらなくては!」という思考に走りがち。不十分な理解のまま動いて、失敗する例もあります。敏感になってはいても十分に理解していなければ、オンラインの世界では、狙っている層に逆効果を及ぼす可能性があるのです。ロムニー氏は自分の支持層を意識し「アダルト系の画像を子供の手に入りにくくしたい」という公約を掲げています。そして、「インターネット上で子供をより安全にしたい」として、ある演説にてユーチューブを痛烈に批判したのです。「ユーチューブは見知らぬ人と友達になれるサイトであるが、ユーザー層を調べたところ、2万9000人の性犯罪者がいた」と語ったのです(要するに、危険に満ちたウェブサイトであると言い放ったのです)。
しかし、メンバー層に2万9000人の性犯罪者がいることが発覚したのは、実はユーチューブではなくマイスペースだったのです。これだけでもかなり痛い誤解ですが、批判すべきであったマイスペースにロムニー氏は自己紹介ページを持っていました(溜息)。
ロムニー氏がCNNとユーチューブ共催の討論会に参加をするかどうかは未定のようですが、「ユー
チューブ討論会には威厳が足りない」という主旨の発言もあったとか……。オンラインユーザーの反感をどこまで背負い込むつもりなのでしょう。
最近、共和党候補者の何人かは「オンラインを利用してはいるものの、ユーザーとの対話を避けてしまうため全くプラスに変えられない」と批判されています。全体的に共和党候補者が、ウェブ上の募金集めでは民主党候補者に負けている原因とも言われています

2008年6月26日木曜日

「SNSとマーケティングと政治家」USFL連載その第25回(10月1週号)

ソーシャル・ネットワーキング・サイト(SNS)やウェブを利用したマーケティングにおける成功・失敗例に、どれもかなり面白いものがあります。今回は、政治家とオンラインにおける彼らのマーケティングについて触れます。

04年はディーン氏が善戦
前回(04年)の大統領選挙において、ある民主党の候補者が、その後の政界のキャンペーン活動を変えたと言われています。ハワード・ディーンという、出馬当時はほとんど知られていなかった民主党の大統領候補です。彼は、政界においてはほぼ初めての試みとして、インターネットとSNSを利用し、募金集めから知名度向上に至るまで大成功を収めました。ご存知の通り、民主党の予備選(大統領選に出馬する候補を選ぶ党内選挙)には勝てませんでしたが、彼のオンライン活動は歴史にその名を残したと言っても過言ではないでしょう。

最終的にオンラインで集めた支持や知名度を票に変えることは難しかったようですが、知名度も政治資金も乏しかった無名の政治家が、全国区の大物政治家との予備選で善戦したのは事実です。これは、無名の企業がウェブマーケティングをうまく活用し、大手企業にオンライン上で善戦しているケースに似ていますね。

大統領選挙の候補者たちは、幾つかの厳しい課題に直面しています。その一つに、宣伝活動をするための資金力の極端な差が挙げられます。投票率の低い若者層の興味をいかに引きつけるかも切実な問題です。でも、企業と同様、ウェブマーケティングを有効に活用すれば、こうした問題をある程度はクリアできることでしょう。

ちなみに04年における若者の投票者数は、前回00年の時よりも500万人近く多かったそうです。その理由には、イラク戦争など政治への関心が高まっていたことも挙げられますが、インターネットにより手軽に情報収集やコミュニュティー内の対話が可能になり、若者の政治参加が容易になってきた点も見逃せません。

08”年のディーン氏“は?
08年のディーン氏になるのは、もしかしたらロン・ポールという共和党の候補かもしれません。皆さんは、彼の名を聞いたことがありますか?既存の大手マスコミを視聴している方にとっては、馴染みのない候補かもしれません。しかしポール氏こそ、今回の”オンライン候補者“の筆頭でしょう。

今年の7月、「Ron Paul」というキーワードは「George Bush」よりも多く検索されていたのです。インターネットをうまく使うポール氏は、ユーチューブやブログなどで政策や公約を伝え、かつてのディーン氏のようにSNSのwww.meetup.com(興味・関心が同じ人々をつなぐSNS)を利用して、支持者が簡単に集会を開いて募金活動などができるようにしています。

ちなみに彼はフェイスブックにおいては、より知名度のあるジョン・マケイン候補より多くの支持者を持ち、マイスペースにおいては、有力候補のミット・ロムニー氏よりも多くの「友人」を持ち、ユーチューブにおいては、民主党のヒラリー・クリントン候補よりもビデオの閲覧回数が多いのです。

しかしロン・ポール候補が予備選に勝つことはあり得ないと言われています。それなのに、なぜオンラインではそこまで支持を得られるのでしょうか。一つ言えるのは、オンライン・コミュニティーとオフラインの世界とには、いくつかの明確な違いがあるということです。

2008年6月3日火曜日

「SNSとマーケティング」USFL連載その第24回(9月3週号)

ウェブマーケティングの様々な面を紹介してきた本欄ですが、主に取り上げてきたのはSEM(検索エンジンマーケティング)でした。今回から4回にわたって、ウェブ上の別のマーケティング媒体というか手法であるSNSについて触れます。

ソーシャル・ネットワーキング
以前、ウェブ上のコミュニケーション方法が、従来の一方通行型からインタラクティブ型(ユーザーがウェブ上で他者とのコミュニティーを形成する)にシフトしている傾向について触れました。
ウェブ統計を取るヒットワイズ社によると、今年の2月の時点において、ウェブユーザーの6・2%がソーシャル・ネットワーキング・サイト(SNS)へアクセスしています(日本では「SNS」の最後の「S」はサービスの略だとされていますが、本欄ではウェブサイトを意味すると考えます)。
SNSといえば日本の場合、ミクシィ(Mixi)などが有名です。アメリカの代表的なSNSは、マイスペース(MySpace)とフェイスブック(Facebook)になります。

ひと口にSNSと言うけれど
現在2億人のメンバーを持つと言われるマイスペースは、何年か前にフォックス・ブロードキャスティングの親会社に約6億ドル弱で買収された巨大SNSです。そして、マイスペースに次ぐフェイスブックは3100万人強、日本最大のミクシィは約1100万人のメンバーを持つと言われています。
初期の頃から多くのユーザーを確保していく方針だったマイスペースでは、誰でもアカウントを作ることができ、見事に莫大なユーザーの獲得につながりました。
一方フェイスブックは、元々ハーバード大学の学生間で始まったものです。その後近辺の大学生に拡張され、さらに「.edu」のメールアドレスをもつ学生(正式の大学生)、さらには高校生をも追加していきました。現時点では、誰でもメンバーになれることになっています。
この背景の違いが、最近になってSNSの階級社会を生み出していると言われています。ざっくり言ってしまうと、高等教育を受けた層はフェイスブック、庶民派はマイスペースです。
SNSが登場した初期の頃から、巨大SNSの持つメンバー数やユーザー層に魅力を感じ、様々な音楽バンドから各種ショップまで、SNS上でプロファイル(自己紹介的なホームページ)を作り、低価格で口コミ効果を狙う人々がいました。特に若者層にアピールしたい場合、伝統的なメディアよりウェブという新メディアと向き合う必要性が出てきました。もちろんその中には、効果的なキャンペーンもあれば、伸び悩む、あるいはかえって反感を買ってしまうキャンペーンもあります。
本当のところは、SNSごとに「味」というか「傾向」があるので、それらを十分に理解していないままマーケティングを行うと痛い目に遭います(6月3週号で紹介したように、バイラル・マーケティングに失敗してユーザーの反感を買うのと同じです)。

100万人以上の友達
SNSには通常、「友達」機能があります。プロファイルを見て「友達になりたい」とリクエストを送り、承諾されれば、めでたく友達です。中には100万人以上の「友達」を持つ子もいます。
03年からマイスペースのメンバーであるクリスティーンさん(ユーザー名forbidden)は、「友達」の数の多さを利用し、無名の一般人からインターネット・スターへと変身しました。今ではマネージャーを持ち、スポンサーもついて、テレビや雑誌にも出演しています。
マイスペースの使用ルールにより、本当は商業目的に使ってはいけないとはいえ、知名度を上げれば、
知名度自体をお金に変えることができるという彼女の考え方は、まさに今の時代を表していますね。
次回10月1週号(No.374)以降では、SNSをうまくマーケティングに活用できている例と、逆に甘く見て痛い失敗をしているケースを具体的に取り上げます。

2008年5月13日火曜日

「アメリカ進出とブランディング」USFL連載その第23回(9月1週号)

日本に住んでいた頃、テレビのニュース番組などを見て不思議に思ったことがありました。「海外から見た日本」という話題が頻繁に取り上げられていたのです。アメリカでは、「海外から見たアメリカ」という報道など、恥ずかしいくらい少ないため、余計に不思議に感じたのかもしれません。

「侍」「芸者」と「日本製」
「海外から見た日本」に強い関心を持っている日本の人々は、きっとアメリカにおける日本のイメージにも詳しいのだろうと私は思っていました。
しかし今は考えを改めています。

どうもアメリカの消費者を甘く見ている気がするのです。「侍」「忍者」「芸者」という伝統的な日本のイメージを、アメリカ人の日本観だと思い込んでしまうケースがあります。そしてその伝統的なイメージに乗っかったまま、単純なアピールで攻めるマーケティング戦略が結構見られます。必ずしも不正解とは言えませんが、和食店でもない限り、おそらく不十分です。

次によく見られるアメリカ進出の失敗例は「日本製」であることを過信してしまうケースです。

前回、トヨタが行った「レクサス」のブランディングに触れました。レクサスは素晴らしい性能をもつ日本車ですが、決して「日本製」であることに頼り過ぎませんでした。レクサス自体としての巧妙なブランディングが今日の成功に結びついたと言っても過言ではないでしょう。もちろん、素晴らしい性能が大前提ですが、「日本製だから売れるはず」という単純な発想では決してなかった。その逆に、アメリカ人が日本車について持つ、ある種の固定観念を払拭するようなマーケティングを行っていたのです。

市場開拓:お尻が文化を変える?
アメリカの消費文化に元々ないものだからといって、アメリカで売れないわけではありません。その代表例には、お豆腐、緑茶、そして最近では枝豆といった、アメリカの食文化に参入した日本の食材が挙げられます。

最近の市場開拓は、ウェブマーケティングなど比較的に安価な手法の出現により、以前よりは簡単になってきています。先日、インターネット上である記事を読んでいた時、そのサイトにあったバナー広告がとても気になりました。

スマイル・マークの書かれた裸のお尻たちが私を誘っているのです。
といっても、普通のまじめなニュースサイトですよ(汗)。

そのバナーは、日本の便座メーカーTOTO社のものでした。アメリカではまだ馴染みの薄いビデ・トイレットシートを宣伝していたのです。

このバナー、5月1週号(No.355)で取り上げたバナーブラインドネス(消費者が無意識に広告を無視できるようになること)を、見事にクリアしたわけです。

何しろお尻をそのまま堂々と出しているのですから、さすがにインパクトがありました。ウェブという媒体だからできた部分もあります(タイムズ・スクエアの屋外広告にも出そうとしたところ、教会から抗議を受け、取り止めになったようです)。大手企業にしてはリスクのある大胆なアプローチですが、クリーンなイメージもきっちり残せていると思いました。

型にとらわれず、ウェブもうまく活用して、元々ない市場までも創造しようとするTOTO。学ぶべきところがたくさんあると思いませんか?

...

2008年4月10日木曜日

「ブランディングその3」USFL連載その第22回(8月3週号)

これまで2回にわたって「ブランディング」について触れてきました。今回はそのまとめです。でも、「ブランディング」の定義をまだ説明していませんでした。「ブランド」とは、商品やサービスを象徴するものであり、名称や外見(ロゴ、パッケージ、色など)のみならず、その商品や企業に対する消費者の精神的なあり方までも含んでいます。企業は、消費者が自社ブランドに対するロィヤリティー(忠誠心)を持つようマーケティングします。そして、競合する商品の中から自社商品が選ばれるようにするのです。消費者に自社ブランドを浸透させる行為を「ブランディング」と呼びます。

ちょっと思い出話
私の祖父母の世代は「メイド・イン・ジャパン」に対して好意的ではありませんでした。「日本製は安物」というイメージがあったのです。私が初めて日本製品に触れたのは、家族が真っ青な” ダツン“(DATSUN/日産自動車が用いた商標名)の小型トラックを買った時でした。買ってすぐ、母がドアを開こうとするとドアが外れてしまいました(笑)。

2台目の日本車はホンダのシビック。外見は特に魅力的ではなかったのですが、新車の取り柄について両親が「安くて、燃費が良く、長持ちする」と話していたのを思い出します。実際あの車は長く持ちました。その後はターセルなど、色気はなくても、経済的で安定性のある交通手段としてトヨタ車を買うようになりました。
以来、私の家族はスウェーデン製の例外一台を除き、日本車を買っています。
このようにしてトヨタ車は、私と、おそらく私と同世代のアメリカ人の頭の中に浸透していったと思います。安定性・信頼性があって経済的。色気はほとんどないけど良い車。そういうブランドイメージです。

ブランドの持つ意味
ご存知のとおりトヨタは今、アメリカの高級車マーケットに挑戦し、見事に成功しています。しかし、あえて「トヨタ」ブランドではなく、「レクサス」ブランドとしてアメリカ市場に登場させました。
いったい何故でしょう?
日本人の方からしてみると、日本車にも高級車があることは不思議では
ないと思いますが、アメリカ人の感覚では違ったのです。20年前のアメリカでは、「日本車」は安定性・経
済性に優れてはいても、決して高級なイメージはありませんでした。
そこでトヨタはマーケティング戦略として、「トヨタ」という冠をはずし、全く別物であるかのような「レクサス」という新しいブランドを作り上げていったのです。

ブランディングの極意は一に露出、二にイメージ
これまでの2回、ブランド認知度アップの手法を紹介してきました。サービスや商品を人目に触れさせる手段として、テレビCM、ラジオ、新聞・雑誌広告、インターネットの検索エンジン(PPC やSEO)など広告媒体を利用できます。このステップは必要不可欠であり、非常に重要であることは誰にでも分かります。
そして、消費者がそのブランドに対してどういうイメージを持つか?
結局のところこれが、最終的に消費者がその商品を買うか買わないかを決める要因になります。
先のレクサスの例のように、ターゲットとするマーケットに受け入れられる戦略的なブランドイメージを創造する必要があるのです。
一に露出、二にイメージ。この2つのステップをクリアした時こそ、ブランディングは真の威力を発揮します。逆に言うと、この国では、ブランディングされていないものはまず売れません。この事実をきちんと理解して、ウェブを活用したマーケティングを行いましょう!

2008年3月15日土曜日

「ブランディングその2」 USFL連載その第21回(8月1週号)

第21回目はUSフロントライン(2007)8月1週号USFLに入っています。
コラム は、このブログ内でお読み頂けます。


やさしく解説 ウェブマーケティング
レイア・ワークマン(ACE Inc.)

昨夜、我が社が新しく開設したEビジネスセンターの準備が遅くまで続き、お腹が減ったのでファストフードを食べに行きました。私は決してファストフード愛好者ではありませんが、一部のファストフード広告の大ファンです。特Jack in the BoxとCarl's Jr.とい2社を評価しています。

東海岸在住の方は、西海岸が中心のこの2社には縁がないかもしれません。でも、もしかしたら彼らの天才的なブランディング戦略によって、名前を聞かれたことがあるかも。

昨夜食べに行ったバーガー屋はCarl's Jr.でした。でも、数年前のヒット宣伝がなかったら、きっと何も考えず、見慣れたブランディングの王様マックに行っていたことでしょう。

ビキニとバーガー
Carl's Jr.は2005年の春に、ピチピチ皮のビキニ姿のパリス・ヒルトンを使って新商品のスパイシーバーガーを登場させました。

パリスが身を振りながら高級車ベントレーを洗車し、最後にがぶりとバーガーを頬張る。全国のインターネットユーザーはこのCMビデオを求めて、同社ウエブサイトに殺到し、サーバーをクラッシュさせたほどです。
(Youtubeで「paris carls jr」と検索すれば見られます)。

世界に3万1000店舗以上をもち、年間何十億ドルも広告費に使うマクドナルド。こうした大手のシェアを奪うのは並大抵ではありません。しかし、資本力のはるかに劣る小規模なチェーン店(買収した中・東部のHardee'sを含めても全体で4000店舗以下)が、アイデアとテレビCMとインターネットと口コミを駆使して、少ない広告費用で、見事に消費者に認知されたのです。

似たような商品を提供しているにもかかわらず、世界的超大手と勝負ができたCarl's Jr.は、ブランド認知度が企業の存続・拡大にいかに重要かをしっかり理解しているのです。

ブランド認知度を高めるには?
さて、御社のブランド認知度はどうですか?中小企業であれば、なおさら認知度を高めないと、ブランド力のある大手に太刀打ちできません。「でも、資本力の劣る私たちに何ができるのか」とお考えの方、ご安心を。方法は無数にあります。テレビCMだけではないのです。

テレビCMの長所は、その圧倒的な視聴者数です。ただしその中には、CMが対象にしていない層も多く含まれる可能性があります。テレビの場合、対象を限定できる要素は、番組の内容や時間帯くらいしかないからです。

では広告を、ある特定のサービスや商品を探しているインターネットユーザーの目に留まるように仕向けたらどうでしょう。予め関心のあるユーザー層を高い精度で絞り込めるため、より効果的に広告費用も使えます。加えて近年のインターネットユーザー数の爆発的増加により、テレビCMに匹敵する、もしくはそれ以上の視聴者数も期待できるかもしれません。

ちなみに私がかつて手掛けたキャンペーンでも、ブランド認知度が少なくとも3倍、多いときは20倍以上もアップしています(パリスちゃんの裸の力を借りずに!)。

前回、SEO(検索結果の上位に表示されるようなウェブサイトを作る)や、PPC(検索キーワードに連動するテキスト広告を表示)が、ブランディングに多く活用されているとお話ししましたが、その理由がお分かり頂けたと思います。

通常、検索エンジンで上位5位以内に常時表示されていれば、それだけで認知度は向上します。ただし認知度アップだけでは不十分
では、次回さらにブランディングについてお話しします。

2008年2月26日火曜日

「ブランディングをご存知ですか?」 USFL連載その第20回(7月3週号)

第20回目はUSフロントライン(2007)7月3週号USFLに入っています。
コラム は、このブログ内でお読み頂けます。


やさしく解説 ウェブマーケティング
レイア・ワークマン(ACE Inc.)

SEMとはSearch Engineの略で、検索エンジンを使って様々な手法により集客するマーケティングの総称です。SEMの代表例には、本稿でも取り上げてきたSEO(検索結果の上位に表示されるようなウェブサイトを作り、集客する手法)や、PPC(検索キーワードに連動するテキスト広告を有料で表示してもらい、集客する手法)などがあります。

SEMは、やっていて当然
北米における今年のSEMの統計を見てみましょう。昨年、北米の広告主は、SEMになんと94億ドル(*)を費やしました。2005に比べると62%の増加です。2011年までには186億ドル(*)が費やされると予測されています(*これより多いという予測すらあります。SEMは大産業であり、一般の企業の広告費として年々急増していることが分かります)。
アメリカで本気でビジネスをしたい人であれば、誰もがSEMを当たり前に行っており、SEMなしでは考えられないところまで来ているのです。今からSEMを始めるとすれば、完全に後発組です。
その昔、ホームページを持つことがステータスになっていた時代もありましたが、今や企業においてホームページを持つだけではステータスでも何でもありません。これと全く同じく、SEOやPPC「 も、実は数年前から「やっていて当たり前」の時代になっています。

SEMに関する面白い事実
SEM利用者増加の要因の一つは、オンラインビジネス(ネットユーザーが顧客ベースのビジネス)の増加です。これは読者の皆さんも、感覚的に理解しやすいと思います。
ただSEMは、アメリカのマーケットにおいては、オンラインでの直接販売より、むしろブランディングに活用される傾向がありました。2006年になってようやく、売り上げに直接つなげる広告ツールとしてのSEM利用が上回ったのです。これって少し意外ではないですか?
「そもそもブランディングとは何?」と思われていた方、もしもブランディングについてご存知ないのであれば、ビジネス的にはかなり痛いです(次回は、この点をもう少し詳しく触れます)。


ブランディングとは何か?
御社の商品・社名は、消費者にどれぐらい知られていますか?それを確認する一つの指標が、検索エンジンでの検索数です。「ほとんど検索されていない」企業の方にこそ、「ブランディング」の必要性をお教えしたいです。
「マイクロソフト」という社名を知らない方はいないでしょう。Windowsソフトウェア名もないと思います。まさにブランド認知度が高いといえます。しかし「Zune」はどでしょうか?
知らない方も結構いると思います。これはマイクロソフト社がアップル社の「iPod」に対抗して出したメディア・プレイヤーです。

今年の1月、(2007年当時)ある検索エンジンにて「Zune」というキーワードが18万6624回、同じ時期に「iPod」検索された回数は103万1801回。約5倍以上でした。
一般の人にとってメディア・プレイヤーといえば「Zune」ではなく「iPod」なのです。これがブランディングの力です。